『祐介』尾崎世界観
この恥ずかしい内容の本の感想を書くために、ブログを開設した。
これを読んでいることを家族や友達に知られたくなくて、Kindle版を購入した。逆に言えば、そこまでしても読みたかったのである。それくらいこの本は、みっともなくて、背徳感を持っている。
そして背徳感のあるものは、みんなが覗きたいのである。
まずこの表紙からして恥ずかしい。家の本棚に置いたら間違いなく家族が手に取ってしまう。(とはいえ、うちには成人済の夫しかいないから問題はないのだけれど)
しかし私はKindle版で購入したので、この危機は回避。
この本は、電車の中でいかにも純文学を読んでいますよみたいな澄ました顔をしながら一気に読んだのだけれど、正直読んでいるときは心中穏やかでなかった。
若いときの決して綺麗でない夢や欲望や羨望やらが、まるで臭いニオイを発しながらこちらに向かってやってきているような気分になったからだ。
何事に対しても執着しているようで執着していない、執着していないようで執着している。
自分はちょっとたいした人間で、ちょっと他とは違っているんた、と思いたい気持ちがモラトリアムな人間をそうさせる。
だからわざと汚い場所に身を投じたり、他人を使って自分を痛め付けたりする。
これは本当に恥ずかしくて痛々しくて、でも渋谷のスクランブル交差点や中央線沿いを歩きながらちょっとクールな夢について考えたことがあるような人間には、ありがちなことなんだよ………。
そしてそれをとりまく人間も、もれなくみんな恥ずかしい。ポンさんやポンさん信者のくだりなんて、叫びながらバンドTシャツを全部破きたくなったもの。
自分とは関係のない話と思いたいけれど、こういう小社会はどこにでもよくある。
最後に。文章の良し悪し自体については判断しかねるけれど、私が映画を作る人間であればこれで映画を撮ってみたいなあ、と思うくらいには情景がとてもよく浮かんだ。もちろん祐介役は本人にやってもらう。それか伊野尾慧くんにやってもらう。
くれぐれも星野源で映画化しませんように。